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117v仕様を100vで使うとどうなる?

  • Michio Takahashi
  • 2024年7月28日
  • 読了時間: 4分


たまに見かける117v仕様、つまり米国仕様のアンプがあります。

当方であれば、

TwinReverbSF、BassmanSF、JMP1959、JMP2003なんかがそうですね。

これらのアンプは117vで状態で調整されているので、きちんとした性能を出すには

必ず昇圧トランスを使用して117vで使う必要があります。

しかし気づかずに使っている方や、あえて100vで使う方もいらっしゃいますよね。

そういった使い方をした場合にどうなるのか?、という点が気になっていました。

今回、たまたま修理品で入ってきたアンプが117v仕様ということで、

内部点検を兼ねて実際にどう違うのかを調べてみました。



こちらがそのアンプ、'74モデルのFender Vibrolux reverb、117v仕様です。

まずは117vにて測定します。

パワー管の電圧は390v、ここから適正バイアスを計算すると46mAとなります。

そこでバイアスをおおよそ46mAに調整します。

(実はこのアンプのオリジナル回路には調整回路がないため、バイアスの調整は

 回路の半田付けを伴うとても厄介なものとなっております。

 この個体に関してはつまみで簡単に調整可能なように改造してあります。)

測定用のサイン波を入力し、波形が崩れない、つまり、クリーンな音が出ている

状態での最大音量を探します。

オシロスコープの黄色が入力波形、水色が出力波形で、下部に小さく見えているのが測定値です。

今回はボリュームがおよそ4.5くらいで、この時出力された電圧は9.65v-rmsでした。

この電圧はスピーカーの端子電圧ですので、これは音量に直結した数字となります。

次にさらにボリュームを上げて歪んだ状態を見てみます。

試しにボリュームを6まで上げると、波形は歪み、出力は12.4v-rmsとなりました。

ちなみに入力側の波形が歪んでいるのは出力側からの影響です。

また波形が流れているのはたまたまロックが外れたからで、見辛くてすみません。

ボリュームの上げ幅と出力電圧の上昇具合からするとクランチ程度でしょうか?



次にこの状態で、電源電圧を100vに下げます。

ジュエルランプが少し暗くなりましたが、これは真空管のヒーターと同じ部分から電源を

取っており、117vでは6.3vありましたが100vにすると5.3vでした。

ヒーター電圧は仕様では±10%となっておりますので、とても低い状態ですね。

さて、この状態のパワー管の電圧はというと、およそ330v、バイアスを計算すると

適正値は54.5mAとなっていますが、実測では34.4mAとかなり低い状態でした。

電圧が下がっているので電流も下がったということですね。

本来であれば54.5mAに調整するところですが、今回はそのまま使うとどうなるか?、

が主題ですし、もともとこのアンプは調整できない回路ですのでそのままにしておきます。

念の為54.5mAに調整しようとしてみましたが、通常の設定では調整範囲に入らず

調整しきれませんでした。

さて、ここまでバイアスの値が低いとどうなるか、ですが、このアンプはプッシュプルの

アンプなのでそろそろ波形の上下の合成がうまくいかなくなり、汚いノイズが出始めます。

では先ほどと同じように信号を見ていきます。

クリーンの状態はボリューム位置が同じ4.5が限界でした。

ですが、出力されている電圧が全く違っており、今回は8.04v-rmsとなっています。

つまり先ほどと比べると音量がずっと低いということですね。

ではボリュームを上げるとどうなるかということで、先ほどと同じ6に上げます。

これまた同様に歪みました。 そして出力電圧ですが、9.62v-rms、こちらもだいぶ低いです。

それに先ほどと違って電圧の上がり幅が小さい、歪み方が大きく音が潰れて音量が

上がってこなくなり始めている、ということではないでしょうか?

というか、この電圧は117vの時のクリーンの限界電圧と近いですね。

つまり、117v仕様のアンプをそのまま100vで使うと、同じ音量を出そうとすると

歪んだ音になるということになります。

ではバイアスを調整すればいいのではないのか?、となりそうですが実際には

それだけではうまくいきません。

というのもプリアンプの電源電圧は低いままで、これは調整のしようがありません。

それに加え真空管のヒーターの電圧が低く電流が十分に流れないので、パワーも

出ませんし、動作点がズレるので早い段階から歪み始めます。


今回、もちろん音出しチェックも行なっております。

117v仕様ではパリッとした音でしたが、そのまま100vで使うと音は濁り、

音量は小さく、歪みがち、という感じでした。

これらを考えると、117v仕様のアンプは昇圧トランスを使って117vで使ったほうが

通常は良い結果となる、ということですね。

もっとも、100vで使った時の音が欲しいという時はそちらが正解、ということには

なりますが、なかなかそういった機会は少ないのではないのかなと思います。


ということで、117v仕様のアンプをそのまま100vで使うとどうなるのか?、

という実験でした。


 
 
 

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